「木津川アート2023」出展を振り返って
吹雪大樹・テクマク合作展
「どこにでもあるけど、ここにしかない」
京都府木津川市梅美台・きっづ光科学館ふぉとん
11月3日~11月19日
毎年秋になると各地でアートイベントが盛んにおこなわれます。街の中の施設や空き家に突如として様々なアート作品が展示され、そこを観光客や地元の人たちが巡って鑑賞していく、そういったイベントの草分けの1つとしてこの「木津川アート」があります。
出展に関するいきさつはこのブログでも開催前に記しましたので割愛しますが、こういった大規模かつパブリックな催し事とはあまり関わりがない作家人生を歩んできましたので、応募しても参加できない出展作家の中に僕とテクマクの夫婦ユニットというカタチで選んでいただいたのは感慨深いものがありました。
展示コンセプトについては、今回の展示エリア3か所を撮り下ろして地元の人が知らない魅力的な風景を紹介するという内容が実行委員会から提示され、それに沿って6月から9月まで撮影をつづけました。
しかし、既に実績もあり各地のアートイベントにも招かれている現代美術の作家さん達に混ざるだけでも荷が重いのに、参加15組のうち写真での出展は僕たち夫婦だけというあたりが結構なプレッシャーでした。この世界では無名のような僕らだからできることをやり抜くしかない!という気持ちで頑張りました。
こういうイベントは展示場所をどこにするかでほぼ出来が決まると思います。いくつかの候補がありましたが、最終的に行きついたのがこの壁!こちらは「きっづ光科学館ふぉとん」という児童向け科学体験施設にある休憩スペースの一角。
この壁には明り取り用の小さな丸窓が無数に配置されており、そこに丸く繰り抜いた写真をセットし、窓を覗き込んで透過光で写真をご覧頂くという趣向でプランを考えました。
ここはちょうどプラネタリウムを観終わった子供たちが通りがかる場所なので子供から大人までいろいろな人に見てもらえる期待が大です。
遠くから見るといっけん何も無いようですが、近づいていくと色とりどりの写真が丸窓の奥に隠れているという展示風景。これには子供も大人も大喜びで、どんどん覗き込みながら「何処の風景だろうか」と想像しつつ大いに楽しんで頂けたようです。
主な撮影エリアはここ20年間ぐらいで整備された新しい街並み。そこに昔ながらの集落も少し混ざりますが、基本的には現代的なニュータウンの風景であったのですけれども、「とても懐かしい気持ちになった」という感想を多く頂きました。
これは「光を覗き込む」という身体的な経験を伴う写真鑑賞によって呼び起こされた感情なのではないかと感じました。アート鑑賞経験のあるなしに関わらず、このような感情を覚えてもらえたというのが、この作品がうまく出来上がった証しだと思います。
これまで様々なエリアで開催されてきた木津川アート・12回目に選ばれた今回の展示エリアの特長と、ここにしかない「丸窓の壁」に出会ったからこそという作品が実現できました。オファーを頂いたときは心配でいっぱいでしたが、最高に良い形で実現出来て嬉しかったです。
京都府と言ってもほとんど奈良に近い不思議な立地の木津川市。今まで僕の人生とはほとんど縁のない場所でしたが、今回のことで人生の想い出の中に深く刻み込まれました。またふらりと写真を撮りに訪れたいと思います。
実行委員会の皆様、会場ボランティアの皆様、市役所職員の皆様、そして遠方から展示をご覧頂いた皆様、まことにありがとうございました!
人生は続く。